世界大家族制とベーシックインカム(17)国家の総合力が問われる御稜威紙幣

投稿:2022年07月16日

出口王仁三郎は御稜威紙幣の発行によって、租税を廃止したり、貧困者を救うことを唱えた。それはおそらく「御稜威紙幣」と呼ぶ一種の政府紙幣の「通貨発行益」によって国家財政をまかなおうということではないか?ということを前回までに書いた。

通貨発行益は、お金を生み出す「打ち出の小槌」だ。
中央銀行券は、印刷しても富は生じないが、政府紙幣は印刷するだけで富が生じる。

価値というものはおもしろいものだ。人が価値があると思えば、価値があるものになる。
「鰯の頭も信心から」と言うが、鰯の頭だって、それに価値があると人が思えば神様になってしまうのだ。
ただの紙切れも、それが1万円の価値があると人々が思えば、1万円になる。
逆に、欲しいと思う人がいなければ、価値はなくなる。
金(ゴールド)も、欲しいと思う人がいなければただの金属だ。

こんな打ち出の小槌を、なぜ今まで使わなかったのか?
陰謀論的には、銀行の信用創造によって利益を得ている国際金融資本が政府紙幣を作らせなかったのだ…ということになる。政府紙幣を発行したリンカーンやケネディを暗殺したのも、みな国際金融資本の仕業である。しかし政府紙幣を発行してニューディール政策を実施したルーズベルトは殺されなかった。何故だろう?
そんな御都合主義の陰謀論はさておき、一般には、政府紙幣の発行はインフレの心配があると言われている。
だが、ある程度までは政府紙幣を出しても問題ないのだ。今現在でも、日本政府は硬貨の発行によって毎年数千億円の通貨発行益を得ている。
それがいくらまで大丈夫なのかは、実際にやってみないことには分からないだろう。
その時々の社会の状況、人心の状態次第だ。

現代はITの時代なので、政府紙幣の供給量を細かく調整することが可能である。
経済状況を見ながら毎日少しずつ政府紙幣を発行し、インフレになりそうなら、供給をストップすればいい。
政府紙幣と言っても、実際にはモノとしての紙幣を発行する必要はない。
政府の銀行残高を増やすだけでよい。
あるいは、電子通貨(デジタル通貨)でもよい。欧州ではすでに自国通貨を電子通貨にしている国もあるし、日銀も円を電子通貨にする実験を進めている。
日本経済新聞(2020年10月9日)「日銀がデジタル通貨実験 「21年度の早い時期に」
ITメディア(2022年4月13日)「日銀はデジタル通貨をどう考えているのか? 実証実験フェーズ2開始のCBDC

モノとしての紙幣を発行すると供給量の調整が難しいが、電子通貨なら簡単だ。
そして、もしインフレになってしまったら、政府紙幣を消してしまえばいいのだ。
1万円札が火で燃えてなくなってしまうのと一緒である。
お金を生んだり、消したりなんて、いい加減なことができるか、と思うかも知れないが、価値というものはそういうものである。
3千万円で買った土地がバブルで1億円に値上がりし、バブル崩壊で1千万円に値下がりしてしまった…というのと同じだ。
株や仮想通貨で一夜にして大金持ちになったり、一文無しになったりするのと何も変わりがない。
政府紙幣が生まれたり消えたりというのは、こういった、価値が上がったり、下がったり、と同じことである。

その上がり下がりする価値とは一体何の価値なのか?
この場合、それは国富(こくふ)である。
国の富の総計だ。官民合わせた、国全体の資産の総計が国富である。
2019年末の時点で、日本の国富は3689兆円ある。
日本経済新聞の記事

この国富には、数字に現れない潜在的な価値がある。
たとえば1億円と評価されている土地が、1億5千万円で売れたとする。この5千万円は、実際に売買が行われないと表に出て来ない数字である。
ダフ屋が、アイドルのコンサートの5千円のチケットを、8千円で売ったとする。
ぴあの窓口では定価5千円で売っていたのに、本当は8千円の価値があったということになる。
この5千万円や3千円が、政府紙幣だ。
国富の潜在的価値を実体化させるものが政府紙幣である。
価値は時と場合によって上がり下がりする。ダフ屋が一日中ねばっても4千円でしか売れないかも知れない。そうなると赤字だ。
だから政府紙幣も生まれたり消えたりするのが、ある意味で自然である。

そうすると、たくさんの政府紙幣を発行するためには、そのものが持つ価値をどんどん高めて行くことが重要になる。
そのものとは、その国であり、その社会である。
8千円のものを8千円で売ったら、それで打ち止めだ。より儲けたいと思ったら、さらにその価値を高めて行く必要がある。
より多く、国の御稜威を耀かすことが、御稜威紙幣を成功させる鍵となる。

御稜威が耀いていない国で政府紙幣を発行したらどうなるか?
たとえば北朝鮮で政府紙幣を発行して窮乏する人民を救おうとしたとする。
人民は金正恩委員長から大金を貰って大感謝だ。
しかしお金があっても、必要とするモノが手に入らない。
供給が圧倒的に不足しているのだ。
その状態でお金持ちが増えてしまうと、モノを購入したいという人が増えて行く。
お金がなければ、欲しくても我慢するが、お金があったら、買おうとする。
そうするとモノの値段がどんどん上昇して行く。つまりインフレだ。

政府紙幣は発行すればいいというものではなく、製品・サービスの供給や、需要など、いろいろな条件がそろって、有効に機能する。
そういう、国家の総合力が「御稜威」であろう。

お金があり、供給も足りてるのに、購買欲求がない場合もある。
コロナ禍に入ってすぐ、2020年5月に日本で一人10万円の特別定額給付金を配った。世論調査によると、給付してから3ヶ月くらいの間に使われたお金は、全約13兆円のうち半分くらいのようだ。
給付金の10万円、いくら使った? 「0円」36.2%
別の研究では6~27%という報告もある。
特別定額給付金が家計消費に与える影響に関する研究論文を発表

十分な供給があっても、欲しいものがないのであれば、お金があっても役に立たない。
この特別定額給付金は赤字国債によって調達されたが、国が借金してもその半分は国民の銀行預金を増やしただけで、社会のため、経済のためには少ししか役立たなかったわけだ。
使ってこそのお金だ。
自分のために使わなくても、他人のために使ってもいいのである。
仮に御稜威紙幣を発行して租税を廃止しても、増えた可処分所得が預金になるだけでは、社会の発展にはつながらない。
お金は何のためにあるのか、何のために使うのか、そういう哲学的・精神的なものも含めたものが国の御稜威であろう。

(続く)



(このシリーズは「霊界物語スーパーメールマガジン」令和2年(2020年)8月24日号から12月28日号にかけて25回連載した文章に加筆訂正したものです)