世界大家族制とベーシックインカム(15)御稜威紙幣の政府紙幣としての側面

投稿:2022年07月15日

出口王仁三郎が説く御稜威(みいづ)紙幣とは、管理通貨制度のようなものであり、また政府紙幣のような側面があるようだ。
前回(第14回)は管理通貨制度について簡単に説明したが、今回は政府紙幣について簡単に説明する。

どこの国でも通貨(紙幣や硬貨)の発行は国家権力の独占事業である。
しかし紙幣は政府が発行するのではなく、各国で定めた中央銀行が発行するのが慣わしになっている。
日本では、日本銀行だ。お札は日本銀行券と呼ぶ。
アメリカでは、国内に12行ある連邦準備銀行が、連邦準備券(ドル札)を発行している。それを統括する機関が連邦準備制度理事会(略称FRB)だ。
EUでは、欧州中央銀行がユーロ紙幣を発行している。

なぜ政府ではなく銀行がお札を発行するのか?
政治家がお札の発行権を握ると、政治屋的な観点でお札を発行し経済が無茶苦茶になってしまうので、政府から独立した中央銀行が経済的観点からお札の発行量を決めた方が良いのだ…とか何とか言われている。しかしそれは建前で、本音は金融人が政治を牛耳りたいので、そういう詭弁を使って、政府に紙幣を発行させないようにしている、というのが実態のようだ。

しかしそれは百年以上前の、政治と経済が別々だった時代の話であって、現代では政治も経済も一体となって動いているので、現代では政府と中央銀行は一体のものと考えていいと思う。(政府と中央銀行を一体のものと見なす考えを、経済の専門用語では「統合政府」と呼ぶ)

硬貨は中央銀行ではなく政府が発行している国が多い。日本も硬貨は政府が発行している。
それは全体の金額が紙幣よりはるかに小さいので、政府が発行しても問題にならないのであろう。
少し古いデータだが、平成23年(2011年)末の時点での日本銀行券の流通高は80兆8千億円、硬貨(記念硬貨を除く)の流通高は3兆2400億円なので、硬貨は紙幣の4%しかない。〔「わが国の通貨制度(幣制)の運用状況について」〕

中央銀行が発行する紙幣とは別に、政府が紙幣を発行しようというのが政府紙幣だ。
おそらく現代では、紙幣を中央銀行が発行しようと政府が発行しようと大差ないと思うのだが、中央銀行券と政府紙幣の違いは、発行者が誰かということだけではない。
紙幣を発行する意味合いが本質的に異なる。

中央銀行券の場合、そこに利益は生じない。紙幣を発行しても富は増えない。
紙幣の製造原価と、額面との差額を「通貨発行益」と呼ぶ。
1万円札の製造原価は1枚20円くらいなので、9980円の通貨発行益、つまり儲けが出るはずだ。
しかし実際には儲けは出ていない。

政府が1万円の国債を発行し、それを市中の銀行に買い取ってもらう。
日銀はその1万円の国債を銀行から買い取り、その時に製造原価20円の1万円札を渡す。こうして紙幣が市中に出回るのだ。
ここで日銀には9980円の利益が出ているように感じる。
製造原価の20円は税金でまかなっているので無視するとして、1万円の国債がタダで手に入ったのだから、1万円の利益が出ているように感じるのだ。
しかし実際にはそうはならない。
この国債はいつかは償還される。
しかし政府がその国債を買い取るのに1万円必要になる。
政府・日銀が一体とものと考えれば、結局プラスマイナス0円である。
国によって多少方法が異なるだろうが、この中央銀行券方式では、利益は生じない。

もっと単純に考えれば分かりやすい。
たとえば国民から税金1万円を銀行に振り込んでもらい、政府がそれを使うときに、1万円札を発行するのだ。
1万円札を発行しても財産が1万円増えることはないのである。

それに対して、1万円札を発行することで財産を1万円増やしてしまおうというのが、政府紙幣だ。
通貨発行益で儲けるのだ。
乱暴な言い方をすると、政府が自ら偽札を作って儲けようというのが政府紙幣である。
あるいは、デパートの商品券(額面と同じ額の商品と交換する)が中央銀行券で、スタアが書いたサイン色紙(単なる色紙が高額で取引される)が政府紙幣である。

利益の出ない中央銀行券に対して、利益を出す政府紙幣なので、発行する意味合いが全く異なる。
仮に便宜上、中央銀行券とか政府紙幣と呼んでいるが、紙幣を発行する機関は重要ではない。中央銀行でも政府でもどこでもいい。
利益を出すのか出さないのかが重要だ。

現在でも日銀は、通貨発行益を出している。
日銀が保有する大量の国債の利息収入が、通貨発行益と呼ばれている。〔日銀資料
しかしこのような利息収入は本来の通貨発行益ではない。これは少々詭弁だと思う。国債運用益とでも呼ぶべきである。
1万円札を発行して、経費を除いた9980円の利益が入るのが、本来の通貨発行益だ。
それに、この日銀が主張する通貨発行益とやらの額はわずか数千億円に過ぎないので、ここでは無視する。
約100兆円の国家予算から見たら、1%に満たない額だ。

ネット上には色々な情報が出回っており、日銀が1万円札を発行すれば9980円の通貨発行益が出ていると主張している人も見かける。
日銀と政府を別体と見た場合には、たしかに日銀が9980円を儲けているように見えるが、それは見かけだけだ。
日銀は国債を買い取って紙幣を配っている。
そしてこの国債は、政府が抱える借金である。
日銀が儲けた分、政府の借金が増えるのだ。
政府・日銀を一体と見れば、プラスマイナス0円である。
9980円の通貨発行益は出ていない。

学者の世界でも、通貨発行益とは何かという議論があって定まってないようだが、それは言葉の定義の問題ではないか?
1万円札を発行したら9980円儲かるという美味しい話だけを、ここでは通貨発行益だと考えることにする。

その意味での通貨発行益なら、現在すでにある。
それは硬貨の発行益だ。
硬貨は、政府が100円玉を製造したら、それをそのまま100円として使っている。
別な言い方をすると、100円玉を、100円で販売しているのだ。
記念硬貨なんかは、まさに販売である。
硬貨の発行によって政府は利益を得ているのだが、あまり大きな額ではない。

紙幣や硬貨の製造原価は国家機密のようで、公表されていないが、推測はできる。こちらのページ(三菱UFJ信託銀行)では、1円玉の製造原価は3.1円、10円玉は12.9円と推測している。
少額の硬貨は赤字なのだ。
しかし高額の100円玉は14.6円、500円玉は19.9円なので、利益が出ている。

2018年度の場合、100円玉の発行枚数は5億7千万枚なので、計算すると通貨発行益は487億円、500玉は2億9千万枚なので1392億円の利益が出ている。
これまた100兆円の国家予算から見たら微々たる額なので無視しよう。

もっと、じゃんじゃん儲かる仕組みが、政府紙幣なのだ。

古いデータだが平成24年(2012年)には1万円札を10億5千万枚発行している。
日本の紙幣や硬貨ってどれくらい発行されているの?

総額10兆5千億円だ。
これが全て政府紙幣だったら、10兆4790億円の利益になる。
これはスゴイ!
政府紙幣をジャンジャン発行すれば、税金を廃止することが出来るではないか!
現在の税収が60兆円なので、毎年1万円札を60億枚発行すれば、税金0円が実現する!

もちろんそれは空論だ。
一般には、政府紙幣はインフレを引き起こすと言われ、政治の世界でも経済の世界でも、その発行に反対する人が多い。
インフレとは、物価が上がり、通貨の価値が下がる状態だ。
しかし、ある程度までなら、政府紙幣の発行も可能だと言われている。
ある程度というのは、インフレにならない程度だ。
それが一体どのくらいの額まで大丈夫なのかは、諸説あるし、その時の社会情勢によるので、実際にやってみないと分からない。

それを実際にやった人がいる。
有名なのはアメリカのリンカーン大統領だ。
しかし暗殺されてしまった。
ケネディ大統領も政府紙幣を発行しようとしたが、これまた暗殺されてしまった。
陰謀論でよく言われることだが、陰で世界を支配する国際金融資本によって暗殺されたというのだ。

政府紙幣は、労せずしてお金を生み出す仕組みである。
政府紙幣の発行に反対する人の中には、それが気に入らない人もいる。
銀行家だ。
現在、お金は銀行が作り出していると言われている。
それを「信用創造」と呼ぶ。
銀行は、他人から借りたお金(預金)を又貸しして、その利息で利益を得ている。
お金を貸すと言っても、たいていは現金で渡すのではなく、通帳に金額を記すだけだ。
預金をもとにお金を貸し、その貸したお金をまた預かって、それをもとにまたお金を貸す…ということを無限に繰り返すのである。
それによって、最初は100万円しかなかったお金が、何百万円にも化けて行く。
そういう意味で、お金を作り出しているのは銀行だというのである。それが「信用創造」だ。
銀行が信用創造によってお金を増やして儲けているのに(貸すお金が増えるなら、そこから得られる利子も増える)、政府がお金を作られては困るのである。
それで政府紙幣を発行したリンカーンや、発行しようとしたケネディは、国際金融資本によって殺された、と陰謀論者は考えるのだ。

王仁三郎が政府から弾圧されたのも、王仁三郎が政府紙幣を匂わす御稜威紙幣の発行を唱えたからだ、という見方をする人もいる。

(続く)



(このシリーズは「霊界物語スーパーメールマガジン」令和2年(2020年)8月24日号から12月28日号にかけて25回連載した文章に加筆訂正したものです)