世界大家族制とベーシックインカム(7)税金を廃止して、どうやって政府を運営するのか?

投稿:2022年07月13日

前回(第6回)書いたように、王仁三郎は皇道維新論の中で租税制度や私有財産制の廃止を訴えた。
共産主義もやはり租税制度や私有財産制を否定しているため、王仁三郎の思想は共産主義と同類だと誤解する人もいた。

たしかに表面的には似ている部分もあるが、本質的な違いは、その原動力だ。
共産主義は憎悪を原動力にする。
共産主義の本質は階級闘争である。
階級闘争とは、社会のあらゆるところに敵を作り、『われわれが苦しんでいるのはあいつのせいだ!あいつをやっつけろ!』と戦いを挑むことである。
敵を憎めという教えが共産主義なのだ。

たまたま見ていたユーチューブで、中国のある大学の先生が次のように言っていた。
http://youtu.be/p-FZZYkTkZ0?t=2m13s
「我々が受けた教育はみな階級の闘争の教育で、憎しみの教育なので、寛容の精神に欠けています」

人々の憎しみを煽り立てるのが階級闘争であり、共産革命だ。
たとえ表面的には素晴らしいことを説いていても、憎悪を正義とする社会は長続きするはずがない。

王仁三郎の言葉で言うと、それは「愛悪」である。
「愛善」をもとにした王仁三郎の教えと、「愛悪」をもとにした共産主義のような教えとでは、仮に表面的には似ていても、天国と地獄の差がある。

☆   ☆   ☆

人々の私有財産から徴収するものが税金なので、私有財産を否定する共産主義国には税金がない。
私有財産が無いので、税金の取りようが無いのだ。
しかし実際には、ソ連にも中国にも税金はある。
それは社会主義国だからだ。

共産主義というのは、マルクス主義系の思想で言う、理想社会・地上天国のことである。
王仁三郎が言う「五六七の世」と同じで、抽象的な概念である。
だから、本当の意味での共産主義国というのは存在していない。
ソ連や中国、北朝鮮などを俗に共産主義国と呼んでいるが、それは共産主義国家の実現を目指している国という意味であって、中味は社会主義である。
マルクス主義系では、資本主義→社会主義→共産主義 という三段階を得て社会が発展するとされており、生産財だけ公有にしたのが社会主義である。だから全ての企業は国営になっている。
社会主義の段階では、生産財は公有でも、消費財は私有なので税金が取れる。しかし共産主義の段階では消費財も公有なので、税金の取りようがないのだ。

おそらく、全ての税金を廃止した国は、世界でただ一つ、北朝鮮だけである。
北朝鮮も社会主義国だが、昭和49年(1974年)に一切の税金を廃止した。
税金の無い国! なんて素晴らしい国だろうか! まさに地上天国である!

かつて北朝鮮は地上の楽園だと思い込み、在日朝鮮人や日本人妻がたくさん北朝鮮に帰国した。しかし天国とは真っ赤な嘘で、行ってみたら地獄だった。
北朝鮮への帰還事業は昭和31年(1956年)から始まり、昭和59年(1984年)まで続いたので、「税金の無い国」というプロパガンダは、帰還しようという動機の一つになっていたと思う。

北朝鮮の出版社(朝鮮民主主義人民共和国外国文出版社)のサイトに、税金廃止の法令の日本語訳のpdfがある。初代国家主席・金日成が書いた文書だ。
税金制度の完全な廃止について

税金が無いのに、政府を運営する資金はどうするのだろうか?

同書p5に次のように書いてある。

革命と建設に必要な資金を社会主義経営からの収入によって保障できるばかりか、膨大な国家資金をふりむけて人民の生活を責任をもって保障するわが国社会主義制度のもとでは、国家的および社会的資金需要をみたす補助的な手段として住民から税金をとる必要がなくなった。(略)
わが国にきずかれた強力な社会主義の自立的民族経済は、税金制度を完全に廃止できる強固な物質的保障となる。

わかりやすく言うと、企業の利益を財源として政府を運営するのである。
社会主義国において企業は原則として全て国営である。その利益を政府が吸い上げるのだ。
これは資本主義国で言う、法人税だ。

しかし資本主義国では、企業の利益はあくまでも結果的に生じるものだ。各社が競争し、売れなくて、結果的に赤字になって利益が出ない場合もある。
日本の場合、約7割の会社は赤字決算なので、残り3割の会社からしか法人税を取れない。令和元年(2019年)度の税収を見ると、税収総額約58兆円のうち、消費税は18兆円、所得税は19兆円、法人税は11兆円なので、法人税だけではとうてい政府を運営できない。
財務省「令和元年度 歳入・歳出の概要

だが社会主義国は計画経済であり、必要な分しか作らないので、理屈で言うと全ての企業を黒字にすることが可能である。消費者は商品を選ぶ余地が無く、そこにあるものを買うしかないのだ。企業間の競争がないので、赤字になることがない。
それは別の見方をすると、全ての商品・サービスの価格には、あらかじめ政府運営のためのお金が上乗せされている、と考えることが出来る。
これはつまり資本主義国で言う、消費税である。
さらに所得税も、日本では給与の中から源泉徴収されているが、社会主義国では個人の給与から徴収するのではなく、給与を配る前の段階で徴収していると考えることが出来る。つまり企業から政府運営資金を徴収した残りを、労働者に分配しているのである。
要するに消費税と所得税と法人税を全部ひっくるめて、国営企業から吸い上げているのだ。

一見、税金が無いように見えるのだが、実はちゃんと税金のようなものが存在しているのである。
その辺りをブラックボックスにして、国民に見えないようにしているだけだ。
税金という言葉を使わないから、税金が無いと言っているに過ぎない。
税金を無くしたのではなく、税金の取り方を工夫したのだ。孫正義の0円商法と一緒だ。支払う額は同じでも、支払い方法や名称を変えることで、負担が小さいように感じさせるのである。
税金が無い国というのは、こういう騙しのテクニックによって成り立っているのである。
日本でも、税金という言葉を廃止して、「政府運営協力金」とか「事務手数料」とかに名前を変えれば「税金が無い」国になる。軍隊を自衛隊と言い換えたり、副作用を副反応と言い換えたりするような、言い換えのテクニックである。

ちなみに北朝鮮が税金が無いのにどうやって政府を運営しているのかをネットを探しても、それが書いてあるページはなかなか見つからなかった。唯一、大阪経済大学教授の黒坂真氏が書いた『金日成と資源配分の効率性』という論文のpdfが無料でダウンロードできたので、それが参考になった。ただし今はダウンロードできないようなので、それが掲載された学術誌を見るしかない。その論文の「(その4)税金制度の完全な廃止について」の中で、北朝鮮は「詐欺的な徴税手法」だと指摘されている。

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税金が無い国はおそらく北朝鮮だけだが、税金がとても安い国というのはいくつもある。
それらの国では、政府がビジネスを行う収益によって、政府を運営している場合が多い。
一番いい例は、産油国だ。

産油国だからと言って必ずしも裕福とは限らないが、カタールやUAE(アラブ首長国連邦)、クウェートなどは裕福だ。国によって色々事情は異なるが、政府の歳入の6~9割が原油など資源エネルギーから得られる収入である。所得税や消費税はゼロまたは低率で、教育費や医療費は無料または低額という、高福祉・低負担の国である。
国民の多くは公務員で、安定した生活を送っている。

しかし住民の6~9割が外国人労働者だ。つまり一握りの大金持ち(国民)が大勢の召使い(外国人)を使って成り立っている国なので、本当に裕福な国家と言えるのかどうか疑問だ。所得の格差が広がったと言われる日本だが、年収1000万円以上の世帯(2018年のデータだと全世帯の12.2%)だけを「国民」と定義して、それ以外の低所得者を「ガイジン」にしてしまえば、けっこう裕福な国ということになってしまう。
大企業が正社員の数を減らして、従業員の大半を低賃金の非正規労働者にして、正社員だけに高給を配り、見かけだけ「社員に高給を出す良い会社」に見せかけているの同じ手法だ。
これはこれでかなり詐欺的である。

それはともかく、政府がビジネスで稼げば税金はあまり取らなくても済むわけだ。
日本の場合、令和元年(2019年)度の歳入約100兆円のうち、国営林野などの「官業収入」510億円や、競馬の収益3200億円、財産処分670億円など、ビジネス的なものは全部合わせて7兆4千億円くらいだから微々たるものだ。
財務省「令和元年度 歳入・歳出の概要

王仁三郎は「日本には金(ゴールド)が沢山ある」と教えている。〔水鏡「日本には金は幾何でもある」〕
原油のように、この金を掘り出して売れば、それなりのお金(マネー)になるのかも知れない。
しかし王仁三郎は、租税を廃止してビジネスで儲けろと言っているわけではない。
もっと別の方法だ。

それが「御稜威(みいづ)紙幣」と呼ぶものである。
これは経済学で言う「政府紙幣」のようなものだと思う。

(続く)



(このシリーズは「霊界物語スーパーメールマガジン」令和2年(2020年)8月24日号から12月28日号にかけて25回連載した文章に加筆訂正したものです)