世界大家族制とベーシックインカム(2)「大家族制」とは?

投稿:2022年07月12日

出口王仁三郎は大正6年(1917年)、機関誌『神霊界』誌上で大本神諭を発表した。

大本開祖・出口直に下りた艮の金神(国祖・国常立尊)の神示の原文を「筆先」と呼ぶ。
筆先は平仮名と漢数字で書かれてある。そのため、読む人によって解釈が異なり、神の御心を取り違いをする可能性もある。
この筆先を解釈する権限は、王仁三郎だけに与えられた。
王仁三郎は筆先に漢字を当てはめてふつうに読めるようにして、大正6年2月号から9年9月号まで、順次公開して行ったのである。

大本神諭の、三千世界を立替え立直して五六七の世をつくるぞよ、というメッセージは人々に大きな影響を与えた。
立替え立直しの御用に奉仕したいと、大勢の人が綾部に集まって来た。

王仁三郎は大本神諭と同時期に、大正維新論を機関誌上で発表した。
「大正維新について」を発表したのは大正6年3月号、「皇道我観」を発表したのは8年4月1日号なので、大本神諭と大正維新論を同時並行して発表して行ったことになる。

大正維新は昭和に入ると皇道維新と名を変えたが、内容は一緒である。
単行本として『皇道維新と経綸』『出口王仁三郎全集 第一巻 皇道編』(どちらも昭和9年=1934年発行)などに収録されている。

前回(第1回)の末尾にも記したが、霊界物語ネットへのリンクをここにも記しておく。

●霊界物語ネット:皇道維新について(『皇道維新と経綸』)

●霊界物語ネット:世界の経綸(『皇道維新と経綸』)

●霊界物語ネット:皇道経済我観(『惟神の道』)

原本を読みたい場合は、こちらに本の画像のPDFを置いてある。
霊界物語ネット:書籍ダウンロード

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当時の社会状況は、第一次世界大戦(大正3~7年)とスペイン風邪の流行(大正7~9年)によって、世界的に終末観が広まっていた。
世界人口が20億人くらいの時代に、戦争と伝染病によって合わせて1億人くらいの人が死んでしまったのだ。

また、米騒動(大正7年=1918年)や世界恐慌(昭和4年=1929年)、昭和恐慌(昭和5年)など、経済的な危機が続いていた。
こういった経済的困窮の打開策として、日本は大陸への植民を進め、それが満州事変(昭和6年)、日中戦争(昭和12年~)へと発展して行く。
血盟団事件や五・一五事件(昭和7年)、二・二六事件(昭和11年)のようなテロやクーデターが起きたのも、国民の、特に農村部の貧窮が根底にある。
人々の生活難を背景として、王仁三郎は大正維新(皇道維新)を提唱したのである。

大正5年(1916年)4月22日、王仁三郎は大本の名称を「皇道大本」に改称した。
この皇道大本の目的は、皇道を実行することである。
皇道を実行することが皇道維新(大正維新)なのだ。

その皇道の核となるのは、天皇を中心とする世界大家族制の実施である。

また、それに関連して、

租税制度の廃止、貨幣制度の廃止
金本位制を廃止して、土地為本・御稜威為本を実施
土地や私有財産を天皇にお返しする(公有化)
天産自給の実施
国教の樹立

などを主張している。
これらの詳細は次回以降に書いて行くが、簡潔にまとめたものが『大本七十年史』に書いてあるので、そちらをお読みいただきたい。

皇道論

大正維新論

この王仁三郎の思想は、政治学者により「国家社会主義」に分類されるかも知れない。
北一輝(二・二六事件の指導者)の思想などと同じジャンルである。
しかし国家社会主義と言われるものが、自国一国のみを統治する思想であるのに対して、王仁三郎の皇道思想の最大の特徴は、全世界(地球全体)を統治する思想だということだ。
だから「世界」大家族制と称しているのである。

明治維新以降、グローバル化が進む時代において、一国だけをどうのこうのしてもどうにかなるわけではない。
世界は繋がっている。経済も、パンデミックも、人権問題も、環境問題も、全世界で取り組んで行かねば解決できない。
ベーシックインカムにしても、一国だけで導入することは出来ない。
毎月生活費を配ってくれるなんて夢の国だ。もし日本だけがベーシックインカムを導入したら、世界中から国籍を得ようと殺到して大変なことになる。
ベーシックインカムは、全世界で同時に導入して行かねばならないだろう。

王仁三郎は百年前から、世界を一つと見て、世界をいかにして統治するかということを考えていたのである。
しかし21世紀の現代においても、日本の政治家は、日本一国のことしか考えることのできない井の中の蛙状態の政治家ばかりだ。
世界をどうするかということを論じることのできる政治家が世に現れることを待望する。

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さて、「世界」は分かったが、「大家族制」とはいったい何なのか?
実は何がどう「大家族制」なのか、詳しく書いていないのでよく分からない。
これはおそらく、王仁三郎独自の用語なのではなく、一般的な意味での「大家族制」なのだと思う。
世間一般で言う意味と同じだから、詳しく書いてないのであろう。

一般的な意味での大家族制とは何か?
通常日本で家族というものは、夫婦がコアになる。そこに子供が加わり、場合によっては夫または妻の親が加わる。
これが一般的な家族だ。
夫婦を中心に、二世代または三世代によって構成される。
家族は共同生活を営んでいるが、複数の家族が共同生活を営むスタイルが、大家族制だ。
兄弟夫婦や従兄弟夫婦までもが一緒の家で生活を営むようなスタイルである。
原始的な社会では、たいていどこでも大家族制である。
よくテレビで、いわゆる未開の部族が放送される。一つの集落にたくさんの家族が住んでおり、各戸でそれぞれ生活しているのではなく、みなで共同生活を営んでいる。場合によっては巨大な家一つで何十人もの人が生活している。
あれが大家族制だ。
日本でも、縄文時代は大家族制だったと考えられるし、飛騨の白川村では昭和中期まで大家族制だったらしい。
参考:白川郷の大家族制
参考:大阪毎日新聞(大正11年の記事)

ビッグダディのような家族は「大家族」とは言っても、子供の人数が多いというだけで、夫婦と子供だけの核家族に過ぎない。それは「大人数家族」なのであって、「大家族制」とは異なる。

王仁三郎が唱える世界大家族制とは、天皇を族長とし、世界全人類が共同生活を営むということに他ならない。
原始共同体を、世界的に拡大させたものだ。

それを実際にどう世界に実現していくか? そこにベーシックインカムが出てくる。

家族というものは、実はベーシックインカムを行っているのだ。
家族は、その家に住む人にみんなに、最低限の生活を保障している。
小さな子供にも、働いていないお年寄りにも、最低限の衣食住を与えている。
それがベーシックインカムだ。

ただし厳密に言えば、現代のベーシックインカムは現金で給付する。衣食住に限らず何に使ってもよい。
しかしそれは、最低限の生活が出来るようにという意味であるから、貨幣経済を前提としないのなら、衣食住の保障ということになる。

私たちは、全く意識していないが、一つの家族の中ではベーシックインカムを実施しているのだ。
それを世界大に拡大させたものが、政策としてのベーシックインカムであり、王仁三郎が説く「世界大家族制」である。

(続く)



(このシリーズは「霊界物語スーパーメールマガジン」令和2年(2020年)8月24日号から12月28日号にかけて25回連載した文章に加筆訂正したものです)