言向け和す(3) 古事記に秘められた日本の使命

投稿:2017年07月17日

「言向け和す(ことむけやわす)」とはどういう意味でしょうか?
広辞苑を引くと、「言向け和す」そのものは載っていませんが、「言向く」と「和す」について次のように出ています。

【言趣く・言向く】ことばで説いて従わせる。転じて、平定する。
【和す】①やわらかにする。②やわらげる。平穏にする。

つまり「言向け和す」とは「言葉で説いて人の心を和らげて穏やかにする」というような意味になると思います。

また、旺文社の古語辞典には、

【言向く】そむいている者を説得する。服従させる。
【和す】やわらげる。平和にさせる。帰順させる。

とあります。
意味的には広辞苑と同じでしょうけど、「服従させる」とか「帰順させる」という説明が加わっています。これはもともと「言向け和す」という言葉は、大和朝廷が日本列島全土を征服し、先住民族を支配して行くプロセスで用いられた言葉だからです。

「言向け和す」は古事記に出て来る古い大和言葉です。
古事記は712年に完成した日本最古の歴史書であり、つまり1300年以上前から「言向け和す」という言葉が使われて来たのです。

それは、天孫降臨の時に初めて使われた言葉です。
天照大御神が天孫(ニニギ)を高天原から地上に降臨させる時に「地上の荒ぶる神々を言向け和して一つに統一して治めなさい」というミッションを与えたのです。(注・これは意訳です。詳細はまた後で書きます)

世界統一の使命を受けて降臨した天孫の、その子孫が天皇です。つまり天皇は、世界統一の使命を持っているのです。

その世界統一を実現するための手段として皇祖・天照大御神が指示したものが「言向け和す」です。
言向け和して、世界を統一せよと命じたのです。

しかし現実の日本の歴史はどうでしょうか。
神武天皇も日本武尊も、武力で日本列島を制圧して来たという側面を持っています。大日本帝国も武力で周辺諸国を服従させて来ました。
皇祖の「言向け和せ」という命令に反する方法で、統一を進めて来たのです。

しかし、武力自体を否定してはいけません。武力で攻撃して来る者に対しては、武力でないと対抗できません。物理的な力には物理的な力でないと対処できないのです。これは自然の道理です。
しかし、武力に武力で対抗し、武力で相手を屈服させても、それで平和な世になったわけではありません。表面的な武力紛争がなくなっただけです。屈服させられた相手の心には怨念・憎悪が残ります。それが凝り固まり、何かの機会に爆発して、新たな紛争を生み出すのです。
これは身の回りの紛争──たとえば男女の痴話喧嘩でもそうですね。夫婦喧嘩して奥さんを口で言い負かして黙らせたとしても、後で食事に毒を盛られて復讐される可能性もあるのです。そんな世界は平和とは言えませんね。
武力による解決は、一時的・その場しのぎ的な解決に過ぎないのです。

怨恨を残すようなやり方ではなく、心を和(やわ)して一つになりなさい、ということを皇祖は命じているのです。

その皇祖の大命を探究して81巻の書物に著したものが霊界物語です。
私は、王仁三郎以前に先人たちが「言向け和す」についてどのように論じて来たのか調べてみました。

国立国会図書館には日本全国で出版された書物が収蔵されています。そこで調べてみたところ、驚くことが分かりました。
「言向け和す」について論究されている文献が、全くと言っていいほど無いのです。
ウソだと思う人は国立国会図書館の公式サイトで検索してみて下さい。
http://www.ndl.go.jp/

「言向け和す」でヒットする本は、私の本『超訳 霊界物語 ~出口王仁三郎の[世界を言向け和す]指南書』だけです。しかも副題です。
他に、「ことむけやはす」という言葉が入った本があるんですが、読んでみると著者の自叙伝のような本であり、「言向け和す」を論じた本ではありません。
「言向和」等で検索するといくつか出て来ますが、いずれにせよ「言向け和す」を論じた本ではありません。
「言向け和す」を論じた論文(雑誌等に掲載)なら、何本かあります。しかし、古事記等の文献で「言向け和す」という言葉がどのように使われているのかを調べた論文であって、「言向け和す」とは何なのかを研究した論文ではありません。

他に、検索で出て来ない本でも、主に神道系の本ですが「言向け和す」に言及した箇所がある本なら結構たくさんあります。
しかし前述の辞書に出て来るような意味で使われているだけで、それ以上に探究がなされているわけではありません。(注・そのいくつかを例として後で紹介します)

驚いたことに、古事記成立以来、1300年の間、日本人は皇祖の大命について何ら探究して来なかったのです。
一体なぜ日本国が誕生したのか。
それは天皇が列島を統一したからです。
ではなぜ統一したのか。
それは皇祖の大命降下によるものです。
天照大御神が「言向け和して世界を統一せよ」という大命を降下したからこそ、今の日本人がいるのです。
それを忘れてしまった日本人に、天賦の使命を目覚めさせようとしたのが、霊界物語だったのです。

その事実に気が付いた時、私は王仁三郎のスゴさをあらためて実感しました。

富国強兵を叫び、武力こそ正義と誰もが信じていた時代に、「世界統一」という皇祖の大命を復活させたのです。
そして「言向け和す」こそが皇祖の御心であるということを甦らせたのです。

古事記成立以来、いや、天孫降臨以来、「言向け和す」を本格的に探究したのは、王仁三郎の霊界物語が初めてだったのです。
王仁三郎は弾圧され、非国民・反逆者として罵られましたが、それは全く真逆です。
王仁三郎こそが、皇祖に一番忠実な臣民だったのです。

さて、ここで、『言向け和すは分かったけど、そもそも世界を統一する必要なんてあるの?』と疑問に感じる人もいるかも知れませんので、一言書いておきます。
世界を統一する必要は、あります。
自分の村の中だけ住んでいる分には、統一の必要なんてそれほど感じないと思います。
うちの村と隣り村とをなぜ統一しなくてはいけないのか。
それを感じるのは、人の行き来が起こるようになった時です。ルールとか文化とかを統一しなくては不自由だし、言葉が通じないために意思の疎通が出来ずに無用な争いが起こりがちになります。
人の往き来をしなければいいだろうと思うかも知れませんが、少なくとも、自然環境が変化すると、食べ物や住む場所を求めて人々は移動を始めるのです。
古代国家の栄枯盛衰は、火山の噴火や地震などの大規模な天災と無縁ではありません。

そしてやがて地球的規模の天変地異がやって来ます。
それがいつなのかは分かりませんが、50世紀までには地軸の角度が元に戻る(大洪水の時に地軸が傾いた)ということが霊界物語に予言されています〔第15巻第21章参照〕。
天変地異と言うとオカルトっぽく聞こえるかも知れませんが、地球の長い歴史から見たらよくあることです。「地球あるある」です。たいしたことではありません。しかし人類の短い歴史から見たら、たいへんな事態です。
今天変地異が起きたら、それこそ人類は滅びかねません。もし日本列島が沈んだら(実際には沈みませんが)一体、日本人はどこへ逃げたらいいのでしょうか? 反日感情の高い韓国や中国が日本人を受け入れてくれますか?
中近東が沈んだら、シリア難民を追い返すヨーロッパ諸国が、ムスリムを受け入れてくれますか?
北米のUSAだけが沈んだら、トランプ支持者をメキシコが受け入れてくれますか?
現在の人類の「敵を憎め」という在り方では、来たるべき大峠(天変地異)を乗り越えることが出来ません。
そこで、神様は事前に警告(予言)を発し、人類に在り方を改めさせ、世界を統一して、大峠に備えた体制造りをさせようとしているのです。
世界的規模の天変地異には、人類が一致団結して臨まねばなりません。
その世界統一の役割を担う国として、神様は日本を準備しておられたのです。
それがいわゆる「三千年の仕組」です。
その統一とは武力による統一ではなく、言向け和すことによる統一です。

では、言向け和すとは具体的にどのようなことなのか、その手引きとなる指南書として、霊界物語があるのです。

(続く)