言向和(17) 一つ島の深雪姫と、天の手力神

投稿:2017年08月02日

霊主体従篇(第1~12巻)で、「言向け和す」に関するエピソードとして特筆したいものが4つあります。
一つ目は、国祖が「暴に対し暴で戦うな」と厳命したにもかかわらず、初代天使長・大八洲彦命が「破軍の剣」を使ってしまい更迭されたエピソードです。
これは第9回で紹介しました。

二つ目は、国祖が「真澄の大鏡」を見せ、そして自分の後頭部を見せたエピソードです。
これは第10回で紹介しました。

三つ目は、北光天使が清河彦との問答の末、頭に小便を引っ掛けられにもかかわらず、河に落ちた清河彦を救出したエピソードです。
第12回で紹介しました。

そして四つ目は、一つ島の深雪姫のエピソードです。
第12巻第22章~24章に出て来ます。

ここは拙著『超訳 霊界物語 ~出口王仁三郎の[世界を言向け和す]指南書』のp216~に書いてますので、詳細はそちらを読んでいただくことにして、ここでは概略だけ書きます。

第12巻は「天の岩戸開き」の物語です。いろいろな形の天の岩戸開きのドラマが出て来ます。
秋月姫、深雪姫、橘姫の三姉妹を「月雪花(つきゆきはな)の宣伝使」と総称しますが、その二女・深雪姫は、地中海の一つ島に堅強な城塞を築き、種々の兵器で武装し、天下の英雄豪傑を集めて武術の稽古に励ませていました。
一つ島というのは一つだけポツリと浮いている海の孤島という意味で、現在のイタリア領のサルジニア島に相応します。坤の金神さんが隠退していた場所です。

三五教の深雪姫が軍備を整えつつあるという情報が、天教山のアマテラスの耳に入ると、アマテラスは弟スサノオの心を疑います。天教山を侵略しようという野心があるから、深雪姫に軍を作らせているのではないか、と。

そして二男のアメノホヒノミコト(天菩比命)に、一つ島の深雪姫を征伐せよと出陣の命令を下したのです。

ホヒは大軍を率いて一つ島に上陸しました。

深雪姫の参謀は、応戦のため早く出撃命令を出して欲しいのですが、深雪姫は意外なことを命じます。
「武器をもって敵対してはならない。善言美詞の言霊をもって曲津を言向け和すのがスサノオノミコトの大御心(おおみこころ)。武器は敵を殺戮するためにあるのではない。心に潜む曲津(まがつ)を、剣の威徳によって帰順させるための神器である」

武器で戦ってはいけないと言われ、参謀は驚いて、
「日頃武術を鍛えて来たのはこの時のためです。血迷ったことを言わず、考え直して下さい」

しかし深雪姫の決断は固く、
「剣は容易に用いてはならない。剣は凶器である。暴を以て暴に報いるのは普通一般人がやる手段。いやしくも三五教の宣伝使としては、武を以て武に当たってはいけない。何事も至仁至愛の神に任せよ。武器あって武器を用いず、柔和を以て狂暴に勝ち、善を以て悪に対し、柔よく剛を制するのが神軍の兵法。今日に限り、武器を一切持たぬように兵士に命じよ」
と厳命するのです。

武器を使うなと言っても、では一体どうやって敵と戦えばいいのでしょうか?!

ホヒの軍は山を焼き払い、村々を破壊して進んで行き、深雪姫の城塞に迫ってきます。

そしてホヒは城の門の前で
「城は完全に包囲した。早くこの門を開けて降服せよッ!」
と怒鳴ると、深雪姫の兵士の一人・アマノタヂカラオ(天の手力神)が門の中に現れて、何を血迷ったか揉み手をしながら、
「これはこれはようこそいらっしゃいました」
と言って門を開けてしまうのです。

味方の兵士たちは驚いて
「貴様、さてはホヒのスパイだな!?」
と疑います。

ホヒの兵士たちも、すんなりと門を開けるタヂカラオの態度に戸惑います。

タヂカラオは、敵の大将のホヒに、
「さあ、中へお入り下さい。さぞお疲れでしょう。ゆっくり休んで下さい。暖かい握り飯や、美味しいお酒を用意してあります」

するとホヒは、勘ぐって、
「その手は食わぬぞ。毒入りのメシを食わせてわれわれを殺すつもりだろう」

「いえいえ滅相もない。疑うなら私が毒見をしましょう」
と言ってタヂカラオは握り飯を喰らい酒を呑み
「ああ、うまい、うまい」
と御満悦です。

それを見たホヒは苦々しく納得し、
「よし、わかった。──さあ、皆の者、城は落ちた。中に入るぞ! しかし決して油断するなよ」

警戒しながら城の中に入ると、武装していると思った深雪姫の兵士は誰一人、武器を持っていません。
ホヒは拍子抜けして、
「深雪姫は戦う気はないらしい。──者ども、鎧を脱ぎ捨てて休むぞ」
それまで張り詰めていた空気は一気にゆるみました。

そして敵味方の区別なく、酒を呑み、飯を喰らい、歌い、踊り、笑い合って、そこには地上天国の様相が出現したのです。

その後ホヒノミコトはアマテラスが待つ天教山に帰り、スサノオには野心のないことを報告しました。

──というエピソードです。
http://reikaimonogatari.net/index.php?obc=rm1223

ここは、読むたびにいろいろと解釈が深まって行く箇所ですが、しかし最初ここを読んだときには、いったい何が言いたいのかよく分かりませんでした。
ここだけではなく、最初に書いた「破軍の剣」のエピソードも同じです。
武器を持っているのになぜ戦ってはいけないのか?と。

しかし深雪姫が言うには、武器に対し武器で戦うのは、普通の人がやることだと言うのです。
人類は暴力に暴力で対抗することで、延々と戦争を続けて来たわけです。
神に仕える宣伝使としては、その負の連鎖に艮(とど)めを刺さなくてはいけません。

「柔和を以て狂暴に勝ち」「柔よく剛を制する」その方法の一例を、タヂカラオが自らの行動によって示したのです。

彼の行動が「言向け和す」です。

「憎しみを愛で返した」とも言えるでしょう。
「返報返し」の話も参考にして下さい(→「笑うて返すは神心」)。

(続く)